地震や水害が起きたとき、介護や障害のある家族がいる方には、一般の防災情報だけでは足りないことがあります。
このページは、要点を素早く拾えるようにまとめました。詳しくは、お住まいの市区町村のホームページや窓口で確認してください。
いちばん大事なこと——平時のつながりが、災害時の命綱になります
過去の災害でわかってきたことがあります。
災害が起きたとき、いちばん頼れるのは、平時から関わっている福祉のつながりです。ケアマネージャー、相談支援専門員、デイサービスや短期入所で日常的に利用している施設、地域包括支援センター——これらの「すでに自分の状況を知っている人」が、災害時の動き方を大きく左右します。
福祉避難所も、生活福祉資金の災害特例貸付も、罹災証明書も、制度としては存在します。でも、それを実際に使えるかどうかは、「平時にどんなつながりがあるか」で決まる部分が大きいのが現実です。
このページの後半に、「いま、できること」として具体的に書きます。災害の前にできる準備で、いちばん効くのは、外部とのつながりを作っておくことです。
まず、安全の確保
身の安全を確保する。揺れが収まったら、火の元、出口の確保、家族の無事を確認する。
ここは一般の防災情報と同じです。詳しくは「市区町村名 + 防災」「市区町村名 + ハザードマップ」で検索できます。
避難するかどうかの判断
家が無事で、ライフラインも生きていて、周囲に危険がなければ、無理に避難所に行かないという選択肢もあります。
要介護の家族にとって、慣れた家のほうが負担が少ないことは多いです。本人が混乱しない、薬や医療機器が手元にある、トイレや段差の問題がない——在宅避難のほうが、本人の体調が保たれやすいこともあります。
ただし、
- 家屋に危険がある(倒壊の恐れ、断水、ガス漏れの可能性)
- ライフラインが長期間止まる見込み
- 避難勧告・避難指示が出ている
このようなときは、避難を選びます。
福祉避難所について、知っておきたい現実
福祉避難所は、高齢者、障害のある方、妊産婦、乳幼児などが、一般の避難所では生活が難しいときに移ることができる避難所です。市区町村が指定しています。
ただし、福祉避難所が必要なときに必ず使えるとは限りません。これは知っておきたい現実です。
過去の能登半島地震では、被害の大きかった地域で、事前に指定されていた福祉避難所のうち、開設できたのは2割ほどでした。理由は構造的なものです。
- 施設の職員自身も被災者で、出勤できない
- 施設にすでにいる入所者への対応で、新しい受け入れが難しい
- 施設の建物やライフライン(断水・停電)が被災している
- 道路が寸断され、応援職員が現地に入れない
実際に福祉避難所に入れた人は、もともとその施設の利用者だった人(デイサービスや短期入所で日常的に通っていた人)が多かったです。事前に関係がない状態で、災害が起きてから初めて受け入れを求めた場合、入れない可能性が高くなります。
避難の選択肢を、複数持っておく
福祉避難所を「最後の砦」と考えず、いくつかの選択肢を持っておくと現実的です。
- 在宅避難:家とライフラインが無事なら、これが多くの場合で最良
- すでに利用している施設に頼る:デイサービス、短期入所、グループホームなど、平時から関係がある施設
- 親戚・知人宅への避難(縁故避難)
- 広域避難(2次避難):被災地から離れた地域のホテル・旅館・施設への避難。大規模災害では、行政が斡旋することもある
- 一般避難所+福祉スペース:一般避難所内に設けられる要配慮者スペース
一般避難所でも、配慮を申し出ることができます
避難所の運営者に、家族の状況を伝えると、「福祉避難スペース」「要配慮者スペース」を案内してもらえる可能性があります。状況を説明できるメモがあると、伝えやすくなります。
持って出るもの(最低限)
- お薬手帳(または、お薬の写真)
- 障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳
- 介護保険被保険者証
- 健康保険証
- 普段使っている薬(3日分以上、できれば1週間分)
- 本人の状態を説明できるメモ(普段の様子、苦手なこと、配慮してほしいこと)
薬と医療機器のこと
お薬手帳が、とても重要 かかりつけの薬局が被災して使えなくても、お薬手帳があれば、別の薬局で同じ薬を処方してもらえます。
スマートフォンに、お薬の写真を撮っておくのも有効です。薬の名前と量がわかれば、同じ薬を出してもらえる手がかりになります。
透析、在宅酸素、経管栄養、人工呼吸器などを使っている方 災害時にどう対応するかを、平時のうちに、かかりつけ医・かかりつけ事業者と話しておきます。透析を受けている方は、災害時の透析医療機関のネットワークが各地域にあります。
処方薬がなくなりそうなとき 災害時には、特例で処方箋なしでも継続的に服用している薬を出してもらえる場合があります。最寄りの薬局や、災害医療救護所で相談できます。
病院に行きたいけれど、かかりつけ医に通えないとき
災害が起きた地域では、市町村が「災害医療救護所」を開設します。学校や公民館などに設置されることが多いです。
大規模災害では、DMAT(災害派遣医療チーム)も活動します。
情報は、市役所、テレビ・ラジオ、市の防災メール、「市区町村名 + 災害医療」の検索で確認できます。
罹災証明書——災害支援の入口になる書類
家屋に被害があった場合、ほぼすべての災害支援は、この書類がないと始まりません。生活再建支援金、税の減免、災害ボランティアによる片付け、義援金の配分——どれも、まず罹災証明書です。
申請する前にやっておくこと
片付ける前に、家の被害状況の写真を撮ります。これがないと、調査も保険請求も進みません。
撮り方の目安:
- 建物の外観:4面(前後左右)から1枚ずつ。撮れない面はなくて構いません
- 被害があった箇所ごと:遠景(場所がわかる)と近景(被害の様子がわかる)の2枚セット。外壁、屋根、ドア、窓、内壁、天井、床——被害があるところすべて
- 浸水の場合:メジャーやドア・柱と一緒に撮って、水位がわかるように
- 家の中:被災した部屋ごとに、全景と被害箇所の寄り
軽い被害でも10枚以上、大きな被害ならもっと多く。「多すぎるかも」と思うくらいで、ちょうどいいです。
申請先
市区町村の窓口(多くは税務課・資産税課などが担当)。「市区町村名 + 罹災証明書」で検索できます。
申請に必要なもの(一般的な目安)
- 申請書(窓口またはホームページ)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 被害状況の写真
- 印鑑
申請の期限
原則3か月以内が多いですが、自治体や災害の規模により異なります。早めの申請が必要です。
発行までの時間
被害認定の調査が必要なため、申請から交付まで最低でも1週間。大規模災害ではもっとかかります。
急いで支援を受けたいときは、「罹災届出証明書」という簡易版を即日発行してもらえる場合もあります。窓口で「急ぎで使いたい」と伝えます。
役所と社協での、福祉の手続き
市役所
- 罹災証明書
- 被災者生活再建支援金
- 災害弔慰金(家族が亡くなった場合)
- 災害障害見舞金(重度の障害が残った場合)
- 各種税の減免、保険料の減免・猶予
- 介護保険サービスの利用継続(被災時の特例措置)
社会福祉協議会(社協)
- 生活福祉資金の災害特例貸付(緊急小口資金など)
- 災害ボランティアセンターの設置・運営
- 義援金の受付・配分
被災すると、平時の手続きが「特例扱い」になることが多いです。「申請に必要な書類が揃わない」「窓口に行くのが難しい」というときも、まず相談すると、別の方法を提示してくれることがあります。
家族だけで動けないとき
地域包括支援センター 災害時も、相談先になります。「市区町村名 + 地域包括支援センター」で検索できます。
→ 地域包括支援センターについて、もう少し詳しく(「相談先を探す」ページへのリンク)
ケアマネージャー、相談支援専門員がついている方 まず、その担当者に連絡します。連絡がつかなければ、その方の所属事業所、または市役所の介護保険課・障害福祉課へ。
精神障害のある家族 精神保健福祉センター、または保健所が相談窓口になります。
緊急性が高いとき
- 救急医療:119
- 命に関わるご相談:よりそいホットライン 0120-279-338(24時間・無料・匿名)
いま、できること——平時の備え
冒頭に書いたとおり、災害時の動き方は、平時にどんなつながりがあるかで大きく変わります。
ここでは、いま、できることを並べます。一度に全部やる必要はありません。気になるものから、できる範囲で。
福祉のつながりを作っておく
ケアマネージャー・相談支援専門員をつける 要介護認定や、障害福祉サービスの受給者証を持っている方は、ケアマネ・相談支援専門員をつけられます。担当者がついていると、災害時、その人が動いてくれます。
地域包括支援センターに、一度相談に行っておく いま使うサービスがなくても、「状況を知っておいてほしい」という相談だけでも歓迎されます。一度顔を出しておくと、災害時の連絡もしやすくなります。
デイサービスや短期入所を、週1回でも使ってみる 施設との関係ができると、災害時に福祉避難所として開設されたとき、優先的に受け入れてもらえる可能性が高くなります。介護をしている家族の負担も少し軽くなります。
→ 地域包括支援センターについて、もう少し詳しく相談先を探す
行政の仕組みを使っておく
避難行動要支援者名簿を確認する

災害時に自力で避難するのが難しい方を、市町村があらかじめ把握しておく名簿です。要介護3以上の方、身体障害者手帳1〜2級の方、療育手帳(重度)の方、精神障害者保健福祉手帳1級の方などが、多くの自治体で対象になっています(細かい条件は自治体により少し違います)。
対象の方は、市町村が自動的に名簿に載せていることが多いです。確認したいのは、地域の民生委員や自主防災組織に情報を提供することに同意しているか、という点です。同意すると、平時から、地域の民生委員・自主防災組織・地域包括支援センター・消防・警察などが、あなたや家族の状況を知ってくれます。災害時の安否確認や避難支援につながる可能性があります。
ただし、地域の支援者自身も被災することがあるので、登録すれば必ず助けてもらえるわけではありません。「地域の人に状況を知ってもらえる可能性が高くなる」仕組み、と理解するのが正確です。
「市区町村名 + 避難行動要支援者名簿」で検索するか、市役所の防災担当課・福祉担当課に問い合わせると、自分(または家族)が名簿の対象になっているか、地域への情報提供に同意する書類を出しているか、を確認できます。
書類の提出は、本人でなくても、家族など代理人が手続きできます。多くの自治体で「代筆可能」「本人または代理人の同意」と明記されています。書類には本人欄と代理人欄の両方を書きます。本人が認知症などで意思表示が難しい場合の扱いは自治体によって少し違うので、市役所の担当課に直接聞くのが確実です。
同意したい場合の手続き
地域への情報提供に同意したい場合(または同意の意思表示をしたい場合)の、一般的な流れです。自治体によって細かい部分は違いますが、おおよそ次の3ステップになります。
1. 書類を手に入れる
書類の名前は自治体によって違います。「避難行動要支援者名簿 登録届出書」「外部提供同意書」「同意確認書」などの名前で呼ばれています。入手方法は3通り。
- 市役所(区役所・町村役場)の窓口で直接受け取る
- 自治体のホームページからダウンロードして印刷する(「市区町村名 + 避難行動要支援者名簿」で検索)
- 市役所の代表番号に電話して「避難行動要支援者名簿の同意書を郵送してほしい」と伝える
離れて暮らしているご家族も、電話一本で書類を取り寄せられます。
2. 書類に必要事項を記入する
書類に書く内容は、自治体によって多少違いますが、おおよそ次のとおりです。
- ご本人の氏名・生年月日・住所・電話番号
- 配慮してほしいこと(普段使っている薬、医療機器、認知症の状況、移動の困難さなど)
- 緊急連絡先(家族など、本人以外で連絡が取れる人)
- 同意の意思表示(チェック欄や署名)
- (代理人が記入する場合は)代理人の氏名・本人との関係・連絡先
ご本人が自筆できない場合は、代理人が代筆できます。代理人欄にご自分の情報を書き添えます。
3. 提出する
提出方法は、
- 市役所の窓口へ持参
- 郵送
- 一部の自治体では電子申請(マイナポータルなど)
提出先は、市役所の防災担当課・福祉担当課・危機管理課など、自治体によって担当課の名前が違います。書類に宛先が書かれているはずなので、それに従って提出します。
提出後、登録が完了すると、自治体から通知が届く場合があります(通知の有無や形式は自治体による)。
個別避難計画を作る 避難行動要支援者名簿の、次の段階の取り組みです。災害時の具体的な避難先・避難経路・支援者を、本人の状況に合わせて、平時に決めておく計画です。「誰が、どこに、どう連れて行くか」が事前に決まっているので、災害時に動きやすくなります。
令和3年から、市町村の努力義務になりました。対象になる方は、市役所の防災担当課または福祉担当課に相談できます。ケアマネージャーや相談支援専門員が、計画作成に関わってくれることもあります。
情報を一枚にまとめておく
連絡先と医療情報を、一枚の紙にまとめる
- かかりつけ医、かかりつけ薬局の連絡先
- ケアマネージャー、相談支援専門員の連絡先
- 地域包括支援センターの連絡先
- 普段飲んでいる薬の一覧(お薬手帳のコピーでも可)
- 既往症、アレルギー
- 家族・親戚の連絡先
冷蔵庫の扉、玄関、避難用のかばんなど、見つけやすいところに置いておきます。スマートフォンの中にも入れておくと安心です。
お薬手帳の写真を、スマートフォンで撮っておく
物の備え
- 普段使っている薬(最低3日分、できれば1週間分の予備)
- 医療機器の予備や付属品、消耗品
- 補助具(杖、車椅子の予備パーツなど)
- 障害者手帳、介護保険証、保険証のコピー
これらを、すぐ持ち出せる場所にまとめておきます。
福祉避難所の場所と仕組みを確認
「市区町村名 + 福祉避難所」または「市区町村名 + 個別避難計画」で検索する。市役所の防災担当課・福祉担当課に問い合わせる方法もあります。
ご自身の地域では、福祉避難所に直接避難できる仕組みか、一般避難所を経由する仕組みか、を確認しておきます。
動ける範囲で、できることから。一度で全部を整える必要はありません。
「まず、地域包括に一度電話してみる」「ケアマネさんに災害時のことを聞いてみる」——その一歩からで大丈夫です。
日ごろのつながりが、いざというとき、命を救う可能性を高めます。