家族が認知症になったとき、多くの方が思います。

「これくらい、家族でやれる」
「いまさら、他人に入ってもらわなくても」
「お金もかかるし、面倒そうだし」

その感覚は、自然なものです。

実際、日常の暮らしは、家族の助け合いで回っていきます。通帳を預かったり、買い物に付き添ったり、病院に連れて行ったり。そうやって、しばらくは続けられます。

ただ、家族でやろうとして、急にできなくなる場面が出てきます。銀行で、不動産で、相続で。(施設の契約は、施設ごとに異なります。)「家族だから」が通用しない場面が、突然やってきます。

このページは、そういう「行き詰まり」の前に知っておくと、動きやすいことを整理したものです。

成年後見という制度の話も出てきますが、「いま使ってください」というお話ではありません。「こういう仕組みもあります」という、地図のようなものです。

  1. 家族でやれるうちは、家族で
  2. でも、家族では進まなくなる場面があります
    1. 不動産を売りたいけれど、売れない
    2. 銀行口座が止まる
    3. 相続が絡む
    4. 訴訟や保険金請求
    5. 家族のあいだで意見が割れたとき
  3. でも、成年後見は「いつでも便利な道具」ではありません
    1. 一度始まると、原則として本人が亡くなるまで続きます
    2. 親の財産は、親自身のためにしか使えなくなります
    3. 家族の自由が制限されます
    4. 費用がかかります
  4. 成年後見の前に、考えられる選択肢
    1. 1. 軽度認知症の段階で、できることをしておく
    2. 2. 任意後見契約
    3. 3. 家族信託(民事信託)
    4. 4. 日常生活自立支援事業(社協)
    5. 5. 家族の話し合いを書面に
  5. 成年後見が必要になったとき:何を頼みたいかで、向いている専門家が違う
    1. パターン1:財産がそれほど多くなく、施設入所が当面の課題
    2. パターン2:不動産が複数あり、相続も複雑そう
    3. パターン3:財産整理が中心で、生活面は家族で対応できる
    4. 家族のなかで引き受ける(親族後見)という選択もあります
  6. 後見人は、一人とは限りません
    1. 役割分担ができます
    2. 途中で追加・交代もできます
  7. 後見人の費用について
    1. 1. 申立て段階の費用(申立て時に発生)
    2. 2. 後見が始まってからの費用(後見人への報酬)
    3. 3. 親族後見の場合
    4. 4. 費用負担が難しいときの支援
    5. 5. 期間について
  8. どこに相談すればいい?
    1. まず話を聞いてもらう段階
    2. 専門家を探す段階
    3. 申立てを進める段階
  9. 相談先の人たち
    1. 「家賃滞納」から、看取りまで
  10. この話は、いずれご自身のことにもつながります
  11. 電話する前に
  12. メモを
  13. よくある不安
    1. Q. お金がいくらかかるか、わからなくて不安です
    2. Q. 弁護士さんに頼んだら、もう生活のことは話せないのですか
    3. Q. 親族の誰かを後見人にできますか
    4. Q. 家庭裁判所まで行かないといけないですか
    5. Q. プライバシーは守られますか
    6. Q. 一度始めたら、もう止められないのですか

家族でやれるうちは、家族で

親や配偶者の判断能力がまだしっかりしているうちは、家族が事実上の支えになっていることが多いです。

  • 通帳と印鑑を、家族が預かっている
  • 家族が代わりに引き出しに行く
  • 公共料金や固定資産税を払う
  • 介護サービスの契約に、家族が一緒に署名する
  • 施設の身元保証人を、家族が引き受ける

これは「家族としての自然な助け合い」の範囲です。

世の中の福祉サイトでは「判断能力が落ちたら成年後見」と書かれていることが多いですが、現実には、家族でやれるうちは家族でやっています。そして、そのほうがご本人にとっても、温かい時間が続きます。

でも、家族では進まなくなる場面があります

家族でやろうとしても、ある場面では、急に止まってしまうことがあります。

不動産を売りたいけれど、売れない

これは、家族介護者がいちばんよく直面する壁です。

親が認知症になって、施設に入ることになった。もう自宅には戻らない。空き家のまま、固定資産税だけが毎年かかる。施設の費用は重く、家を売って当てたい。

でも、不動産を売るには、本人の意思確認が必要です。司法書士が本人と面談して、「ご自分の家を売ることを理解していますか」と確認する。その質問に答えられなくなった本人は、売主にはなれません。

家を相続するのは、本人が亡くなってから。でも、その前に、お金は必要になっている——この行き詰まりは、多くの家族が経験しています。

銀行口座が止まる

認知症が進んで、本人がATMの操作ができなくなる。家族が代わりに引き出そうとしたら、銀行で「本人確認」を求められる。家族が「親が認知症で」と説明すると、銀行が口座を凍結する。

銀行は、本人保護のために動きます。家族が引き出していることが「本人の意思によるもの」と確認できなくなった瞬間、家族には引き出させなくなります。

相続が絡む

親が認知症になっているうちに、別の親族(配偶者など)が亡くなる。親が相続人の一人になっているけれど、遺産分割協議に参加できない。「親の判断能力がないので、成年後見人を立ててから協議してください」と言われる。

これは、家族の側からすると思いがけない場面で出てきます。「お母さんが認知症だから、お父さんが亡くなったあとの相続が止まる」という現実は、知らない方が多いです。

訴訟や保険金請求

親が交通事故に遭った。親が訪問販売で高額な契約をしてしまった。保険金を請求する必要がある。

法的な手続きは、本人の代理人(成年後見人)でないと進められないことがあります。

家族のあいだで意見が割れたとき

家族の中で「親の財産の使い方」について意見が違う。「あの人が勝手に親の通帳を持っている」という不信感。親の財産が、誰のものか曖昧になっている。

こういうときに、第三者の目が入ると、家族関係が落ち着くことがあります。

でも、成年後見は「いつでも便利な道具」ではありません

ここまで読んで、「じゃあ成年後見を使えば解決するんだ」と思われるかもしれません。

ただ、成年後見の仕組みには、家族にとっての「重さ」もあります。これは、世の中のサイトではあまり書かれていないところです。

一度始まると、原則として本人が亡くなるまで続きます

「いまだけお願い」とか、「家が売れたら終わり」とは、原則できません。

判断能力が回復した場合や、家庭裁判所が認めた特別な事情がある場合を除いて、本人が亡くなるまで、後見人との関係が続きます。

親の財産は、親自身のためにしか使えなくなります

成年後見人には、「本人の利益のために動く」義務があります。そのため、これまで自然にできていたことが、できなくなります。

  • 生前贈与(暦年贈与など、相続税対策で渡してきたお金)
  • 孫への入学祝い、結婚祝い、お年玉
  • 子の住宅資金援助
  • 家族の生活費に、親の財産を回していたケース

これらは「本人の財産を減らす行為」と判断されて、原則できなくなります。

家族としては、「親の財産を、家族のために使う」が、自然な営みだったかもしれません。でも、成年後見が始まると、その自由は止まります。

家族の自由が制限されます

専門職が後見人になると、家庭裁判所への定期報告があります。本人の財産の使い方は、家族の判断ではなく、後見人の判断で進みます。

「ちょっと孫の入学祝いに」「家族の集まりの費用に」と気軽に使っていたお金が、すべて記録の対象になります。

費用がかかります

費用については、後ほど別のセクションで詳しくご説明します。一度始まると、長期にわたって費用がかかる、という点だけ、ここで知っておいてください。

成年後見の前に、考えられる選択肢

「家族では進まなくなる場面」がやってきても、いきなり成年後見を始めなくても、別の選択肢があります。

1. 軽度認知症の段階で、できることをしておく

認知症が進んでいない段階、または軽度のうちなら、本人の意思能力が認められれば、契約や贈与は可能です。

「もうすぐ難しくなりそう」と感じたら、いまのうちに動く選択肢があります。

  • 医師の診断書で「判断能力あり」と記録してもらう
  • 司法書士や公証人に関わってもらって、契約書を作成する
  • 後でトラブルにならないよう、証拠を残しておく

ただし、慎重に進める必要があります。専門家への相談がおすすめです。

2. 任意後見契約

本人の判断能力がしっかりしているうちに、「将来判断能力が落ちたら、この人に後見人になってもらう」と契約しておく仕組み。

公証役場で契約を結びます。本人の希望を反映できるので、法定後見より自由度が高いです。

3. 家族信託(民事信託)

家族の中で「親の財産を、子が管理する」契約を、生前に結んでおく仕組みです。

  • 託す人(親)、託される人(子など)、受益者(多くは親本人)の3者で結ぶ
  • 司法書士などの専門家に相談しながら、信託契約書を作成
  • 公証役場で公正証書にしたうえで、銀行口座の開設や不動産の信託登記を進める

公証役場は、契約書を正式な書類にしてくれる公的な役所です(市役所や区役所とは別の建物で、各都道府県に複数あります)。家族信託の契約書を、公証人にチェックしてもらい、「公正証書」という正式な書類として残します。公証人は、元裁判官や元弁護士など、長年法律に携わってきた専門家で、中立な立場で契約書を確認してくれます。これによって、契約の信頼性が高まり、銀行や法務局での手続きもスムーズになります。

成年後見と違って:

  • 本人の判断能力があるうちにしか契約できない(認知症が進んでからでは間に合わない)
  • 不動産の売却なども、契約の範囲で家族が進められる
  • 介護や医療の意思決定(身上保護)はできない(財産管理のみ)

費用は、専門家への報酬と実費で、現金のみ20〜40万円/不動産を含む場合は1.5〜2%程度かかります(信託する財産の規模によります)。成年後見と違って、最初にまとまった費用がかかる仕組みです。

「親が元気なうちに、財産のことを整えておきたい」という方が、検討する選択肢です。詳しくは、お住まいの地域の司法書士に相談していただくのがおすすめです。

家族信託には、成年後見と組み合わせて使う選び方や、契約の細かい設計など、お伝えしたいことが多くあります。このページに全部を盛り込むと、かえってわかりづらくなってしまうため、家族信託については、「詳しくは『家族信託を考えるとき』をご覧ください

4. 日常生活自立支援事業(社協)

判断能力に不安があっても、契約を理解できる方向け。社協がお金の管理や通帳の保管をサポートしてくれます。

成年後見ほど重くなく、生活レベルの財産管理に向いています。

詳しくは「相談先を探す:社会福祉協議会」をご覧ください。

5. 家族の話し合いを書面に

成年後見を使う前に、家族の中で「親の財産を、誰がどう管理するか」を話し合って、書面に残しておく。

  • 通帳の保管場所
  • 支払いの担当
  • 重要な判断のときの相談ルール
  • 親の希望(施設の選び方、終末期のことなど)

これだけでも、家族間のトラブルはかなり減ります。

成年後見が必要になったとき:何を頼みたいかで、向いている専門家が違う

ここからは、いざ成年後見を使うことになったときの話です。

成年後見人になれる専門家は、主に3つあります。弁護士・司法書士・社会福祉士

「どの専門家がいいですか?」というのは、家庭裁判所が選んでくれるわけではありません。申立てる家族の側で、考えておく必要があります

そして、選ぶときの基準は、シンプルです。

何を、いちばん頼みたいか

ご家庭の状況によって、向いている専門家は変わります。よくあるパターンを、いくつかご紹介します。

パターン1:財産がそれほど多くなく、施設入所が当面の課題

  • お住まいの家、年金、数百万円〜1000万円程度の預貯金
  • 家族が忙しく、頻繁には親に関われない
  • 当面の課題は、施設探し、入所手続き、入所後の見守り

社会福祉士が候補として向きやすい状況です。

施設や介護サービスのネットワークを持っていて、生活全体を見てくれます。福祉現場の経験があるので、施設選びや介護サービスの調整も、流れで動けます。報酬の面でも、比較的依頼しやすい範囲です。

パターン2:不動産が複数あり、相続も複雑そう

  • 自宅以外にも、土地や賃貸物件がある
  • 親族が多く、相続でもめる可能性がある
  • 過去に悪質な業者との契約トラブルがある

弁護士が向きやすい状況です。

法的なトラブル対応や、複雑な財産管理に強みがあります。訴訟になりそうな場面でも、対応できます。

パターン3:財産整理が中心で、生活面は家族で対応できる

  • 不動産の登記関連の手続きが必要
  • 家族や施設のサポートで、日常生活は回っている
  • 主な課題は、財産の管理と整理

司法書士が向きやすい状況です。

登記や財産整理の専門性があります。報酬は弁護士より抑えめなことが多いです。

家族のなかで引き受ける(親族後見)という選択もあります

専門職に頼むだけでなく、家族のなかで成年後見人を引き受けることもできます。

近年、家庭裁判所は親族後見の選任を増やそうとしています(専門職後見が長期化して、本人の財産が報酬で減ることへの反省から)。

親族後見が向く状況:

  • 家族の中に、引き受けられる方がいる
  • 財産が極端に複雑ではない
  • 家族間で意見が割れていない

ただし、引き受ける家族には、家庭裁判所への定期報告などの負担が発生します。詳しくは、お住まいの地域の家庭裁判所、または社会福祉士会・弁護士会などにご相談ください。

後見人は、一人とは限りません

ここも、世の中であまり知られていない大事な点です。

「後見人は一人」と思っていらっしゃる方が多いのですが、複数の後見人を立てることができます(共同後見)。

役割分担ができます

たとえば:

  • 弁護士が、財産管理を担当
  • 社会福祉士が、身上保護(介護・医療・施設の調整)を担当

このように、役割を分けて、複数の専門家が共同で本人を支える形を取れます。

途中で追加・交代もできます

最初は弁護士一人で始まったけれど、本人の認知症が進んで、生活面の支援が増えてきた——そんなとき、家庭裁判所に申立てれば、社会福祉士を追加で選任してもらえます

逆に、最初は家族(親族)が後見人だったけれど、財産の問題が複雑になって対応しきれなくなった——そんなときは、専門職を追加することもできます。

「お願いした弁護士さんに、いまさら言いにくい」と思わなくて大丈夫です。状況が変わったら、後見人の体制も、家庭裁判所への申立てで変えられます。

後見人の費用について

成年後見の費用は、申立てる前から確定しているものではありません。段階ごとに、別々に発生します。

1. 申立て段階の費用(申立て時に発生)

  • 申立て手数料、書類取得費、診断書代など:実費で2万円程度
  • 鑑定が必要な場合(全体の3〜4%程度):1〜10万円程度
  • 申立て手続きを専門家(司法書士・弁護士)に依頼する場合:10〜30万円程度

2. 後見が始まってからの費用(後見人への報酬)

ここが、一般的なイメージと違うところです。

月いくら、と最初から決まっているわけではありません

仕組みはこうです:

  • 後見人が、家庭裁判所に「報酬付与の申立て」を行う
  • 通常、1年に1回ほどの頻度で申立てる
  • 家庭裁判所が、本人の経済状況・後見業務の内容・地域差などを総合的に判断して、報酬額を審判で決める
  • その審判に基づいて、後見人が本人の財産から報酬を受け取る

つまり、後見人を引き受けるとき、「月いくら」とは決まっていません。1年後の申立てで、初めて報酬が決まります。

報酬額は、本人の財産規模や後見業務の内容によって異なります。

3. 親族後見の場合

ご家族が後見人になった場合、報酬付与の申立てをしないことも多くあります。その場合、報酬は発生しません。

ただし、申立てをすれば、ご家族でも報酬を受け取れます。「家族だから無報酬」と決まっているわけではありません。

4. 費用負担が難しいときの支援

ご本人の収入や資産が少ない場合、申立てや報酬の費用を、自治体が助成してくれる仕組みがあります。

成年後見制度利用支援事業

各市区町村が実施している事業で、

  • 申立て費用(手数料、診断書代、鑑定費用など)
  • 後見人等への報酬

の助成があります。

対象は、主に生活保護受給者です。自治体によっては、生活保護に準ずる方(住民税非課税世帯、預貯金が一定額以下など)も対象に含めています。

お住まいの市区町村の高齢者福祉担当課、または地域包括支援センター・社会福祉協議会で、対象になるかご相談ください。

ただし、生活保護受給ではないけれど、年金収入のみで財産がわずか、というご家庭が、助成の対象外になることもあります。ご家庭の経済状況を踏まえて、利用できる仕組みがあるかどうか、地域包括や社協で一緒に確認していただくのがおすすめです。

5. 期間について

成年後見は、一度始まると、原則として本人が亡くなるまで続きます。途中で「やっぱりやめます」とは、原則できません。家族にとっては、長期にわたる費用と関係になります。

どこに相談すればいい?

成年後見の相談先は、段階によって変わります。

まず話を聞いてもらう段階

「うちの家族に成年後見が必要なのか、まだわからない」「制度のことから知りたい」という段階。

  • 地域包括支援センター:高齢の方の総合相談窓口。成年後見以外の支援も含めて、状況を整理してくれます
  • 社会福祉協議会(社協):成年後見の前に使える「日常生活自立支援事業」もここが窓口
  • 成年後見の相談をまとめる窓口:地域によっては、成年後見について相談できる専門の窓口が設けられています(「成年後見センター」「権利擁護センター」など、地域によって名前が違います。社協が兼ねていることもあります)。お住まいの市区町村にあるかは、地域包括や社協で尋ねてみてください

詳しくは「相談先を探す:地域包括支援センター」「相談先を探す:社会福祉協議会」をご覧ください。

専門家を探す段階

「成年後見を使うことにした、誰に頼むかを決めたい」という段階。

  • 社会福祉士会(ぱあとなあ):お住まいの都道府県の社会福祉士会に問い合わせ
  • 弁護士会:お住まいの都道府県の弁護士会、または法テラス
  • 司法書士会(リーガルサポート):成年後見に特化した司法書士の組織

申立てを進める段階

家庭裁判所への申立てを進める段階。

  • 家庭裁判所:お住まいの地域を管轄する家庭裁判所。手続案内(無料)があり、申立て書式も窓口で受け取れます

後見人を「この方にお願いしたい」と候補者を立てる場合は、申立て前にご自身でその方を探して、依頼の合意を得ておく必要があります。候補者を立てずに「家庭裁判所にお任せします」で申立てることもできます。

申立てを自分で行うのが難しい場合は、司法書士や弁護士に申立て手続きを依頼することもできます(費用:10〜30万円程度)。

相談先の人たち

成年後見に関わる人たちは、本人と長期にわたって付き合います。ここで、現場で関わってきた専門職の風景を、ひとつご紹介します。

「家賃滞納」から、看取りまで

ある社会福祉士が、後見人を引き受けた方のお話です。

入り口は、大家さんが「家賃を払えていない」と気づいたことでした。社協に相談が入り、本人と関わるなかで、認知症の進行が見えてきました。家族との関係も薄く、一人で生活を続けるのが難しい状況。社協から成年後見の手続きに進み、その社会福祉士が後見人として選任されました。

そこから、介護保険の認定、ヘルパーの利用、認知症グループホームへの入所、そして看取りまで——その方の生活の最後の章を、ずっと伴走しました。

成年後見人の関わり方は、ケースによって、本当にさまざまです。「制度の中の決まりごと」だけでは見えない、人と人との関係が、そこに流れています。

この話は、いずれご自身のことにもつながります

ここまで読んでくださった方は、いま、ご家族のために成年後見を考えていらっしゃるかもしれません。

ただ、成年後見は、人生のなかで何度か向き合うことになるテーマです。

ご家族の認知症や障害で考えるとき、まずは「親や配偶者のために」という気持ちで動きます。そのあと、何年か経つと、今度はご自身や配偶者のために、同じ仕組みを考える日が来ることがあります。

判断能力がしっかりしているうちにできること、判断能力が落ちてから動く道——どちらも、選び方は人それぞれです。

ご家族のことを通じて、成年後見の仕組みを知っておくと、いずれ、ご自身のことを考えるときの土台になります。

判断能力がしっかりしているうちに考えておくと、選択肢が広がります:

  • 任意後見契約:信頼できる人と「将来、判断能力が落ちたら、この人に頼みます」と契約しておく
  • 家族信託:財産の管理を、信頼できる家族に託す契約をしておく
  • エンディングノート:成年後見のような法的な契約ではないけれど、自分の希望を家族に伝える書面
  • 家族との話し合い:財産のこと、施設のこと、終末期のことを、判断能力があるうちに家族で共有しておく

ご家族のことが少し落ち着いたら、ご自身や配偶者のことも、ゆっくり考えてみていただきたいと思います。

電話する前に

成年後見について相談するときは、最初に話したいことを少しだけ整理しておくと、話がスムーズに進みます。

  • ご相談したいのは、どなたのことか(本人との関係)
  • 本人の現在の状況(認知症の有無、判断能力、生活の状態)
  • 何に困っているか、何を進めたいか(銀行・不動産・施設の契約など)
  • 本人の財産のおおよその状況(細かい金額でなくて大丈夫です)
  • ご家族の状況(同居か別居か、他の親族との関係)

これらを伝えると、相手の方も「どこから話を始めるか」がわかります。

時期はご都合に合わせていただいて大丈夫です。窓口によっては、数回のやりとりが必要な場合もあります。

メモを

成年後見の相談は、専門用語が多くなりがちです。メモを取りながら聞くことをおすすめします。

  • 相談した日、相手の名前
  • 言われたこと、説明された制度
  • 次にやることとして勧められたこと
  • 次の連絡先、次のアポイントの日時

「家庭裁判所」「公証役場」「ぱあとなあ」など、出てきた言葉も、知らないものはメモして、あとで調べる材料にできます。

よくある不安

Q. お金がいくらかかるか、わからなくて不安です

最初に発生するのは、申立ての費用(2万円程度〜)です。後見が始まったあとの報酬は、家庭裁判所に申立てて決まる仕組みなので、最初には確定していません。

報酬額は、本人の財産規模や後見業務の内容によって異なります。ご本人の収入や資産が少ない場合、自治体の「成年後見制度利用支援事業」で助成が受けられる場合があります(主に生活保護受給者向け)。詳しくは、お住まいの地域包括支援センター・社会福祉協議会にご相談ください。

Q. 弁護士さんに頼んだら、もう生活のことは話せないのですか

そんなことはありません。

途中で「生活面の支援も必要になってきた」と感じたら、家庭裁判所に申立てて、社会福祉士などを追加で選任してもらえます(共同後見)。

最初に決めた体制が、ずっと続くわけではありません。状況の変化に応じて、柔軟に変えられます。

Q. 親族の誰かを後見人にできますか

できます。

家庭裁判所に「親族の○○さんを候補者にしたい」と申立てれば、検討してもらえます。近年は、親族後見人の選任を増やそうという流れもあります。

ただし、家族間で意見が割れている、財産が複雑などの事情があると、家庭裁判所が専門職を選任することもあります。

Q. 家庭裁判所まで行かないといけないですか

申立てのときは、家庭裁判所に行く(または郵送で申立て)が基本です。

ただし、申立ての手続きを司法書士・弁護士に依頼すれば、書類作成や提出を代行してもらえます。

家庭裁判所には「手続案内」というサービスがあり、無料で申立て方法について教えてもらえます。お電話で問い合わせもできます。

Q. プライバシーは守られますか

家庭裁判所、社協、地域包括、各専門職には、すべて守秘義務があります。ご相談の内容が、無断で他に伝わることはありません。

Q. 一度始めたら、もう止められないのですか

原則として、本人が亡くなるまで続きます。

ただし、本人の判断能力が回復した場合や、家庭裁判所が認めた特別な事情がある場合には、終了することもあります。

「いつかはやめられる」前提では考えず、「長く付き合う制度」と理解しておくのが安全です。

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成年後見は、家族にとって重い選択です。でも、知っておけば、必要になったときに動きやすくなります。

このページが、ご家族について考える時間の、土台になれば幸いです。

時期はご都合に合わせていただいて大丈夫です。窓口によっては、数回のやりとりが必要な場合もあります。

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